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i-Rene(アイリーン)とは

 立命館大学では、再生可能エネルギーに基づく電力を地産地消するための枠組みとして自律分散型直流スマートグリッド i-Reneを提案しています。i-Rene は松本らにより提唱されたECOネットに余剰電力融通のために人工知能を用いた自由取引による電力売買を導入したものです。

 i-Rene では複数の発電・消費拠点(住宅、事業所など)が存在しており、それぞれが基本的には発電装置、負荷装置、蓄電池、電力ルータを持つことを前提としています。電力ルータとは蓄電池の残量や電力の発電・消費量を監視しつつ他の拠点との間で電力の送受信を行う情報処理装置です。この電力ルータにより各世帯が相互に余剰電力を融通しあう社会システムがi-Reneなのです。

 i-Rene では、地産地消型の電力取引市場の存在を仮定し、各発電消費拠点が、自らの利潤を最大化しようとするという行動基準に基づき電力取引を行うとし、市場を介した自由な売買に基づき効率的な電力融通を実現することを目指しています。

しかしながら、電力事業者ではなく、一般家庭が電力取引に参加することを考えると、常時、取引を担う事の出来る人員の存在を前提とは出来ません。そこで、人手を介さず人工知能を用いる事でスマートに電力融通を行います。さらに、自動的な電力売買を行うにしても、各拠点が為すべき取引は一定ではありません。各世帯ごとに電力発電・消費・蓄電の諸条件は異なります。よって、電力取引を自動的に行う人工知能は、みずからの環境に適応する必要があるのです。

再生可能エネルギーの普及に向けて

写真01

化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が急がれる

 産業革命以降、私達の世界は化石燃料に頼った文明を築き系上げて来ました。しかしながら、化石燃料の枯渇が目前に迫り、また、化石燃料の燃焼に起因する地球温暖化の問題は国際社会における重要な位置を占めてきています。これより低炭素社会の実現は喫緊の課題となってきています。

 再生可能エネルギーとは、化石燃料と異なり、太陽光や風力に代表される地球上で原理的に枯渇することなく、また生まれ来るエネルギーを指します。低炭素社会の実現を目指している日本政府の温室効果ガス削減中期計画では、太陽光発電を20倍に拡大するこ とが目標とされています。しかし、このままでは太陽光発電の急速な普及は新たな問題を生み出してしまいます。

 昼夜・天候などによって発電量が左右される太陽光発電との系統連携が増えれば、太陽光発電の余剰電力が系統に送り込まれる事により、電力ネットワークに障害を引きこす可能性が高まります。これは逆潮流の問題と呼ばれ、将来の太陽光発電普及の障害の一つとなると考えられています。

マイクログリッド、ECOネット、スマートグリッド

 逆潮流の問題に対して、地域で電力を地産地消する事で対応しようという考え方が検討されてきています。その代表事例である「マイクログリッド」は分散型電源を単独でなく、複数で管理し、既存の大きな電力ネットワークと一点でつながるような小規模系統にまとめようという発想にもとづくシステムです。我が国においても、2003年度からこの考え方に基づく実証試験が、NEDO事業として実施されてきました。しかし、マイクログリッドの運用には電力の集中管理が不可欠で、拡張性に乏しいことが明らかになってきています。

 これに対して、松本らはECOネット(Electricity Cluster Oriented Network)という次世代の電力アーキテクチャを提唱しました。ECOネットは、下記のような特徴を持ちます。

  1. ハイブリッド式の多様な電源をインターネットの概念で自由にネットワーク化し、
  2. ネットワーク内の電力需給バランスは、電力会社からの集中制御システムに組み込まれず自律分散方式で制御され、
  3. 交流電力の周波数制御制約から解放される直流電力を利用してフレキシブルに繋ぎ、
  4. 併せて、全体エネルギーシステムの最適化を図る観点から、熱エネルギーの効率的な利用方法も可能にします。

 このシステムの構造の特徴は、変動の大きい再生可能エネルギー由来の電力を、短距離の電力需給単位内あるいは間で、電力相互融通を行う電力ルータ(Power Router)を介してネットワーク状に相互に連携するところにあります。そのため、システムの規模はクラスター内の電力需給規模に応じて弾力的に変えることが出来、また、分散型であることから初期投下資本が小さく、仮定や事業所単位の小資本での短期間かつ機動的な設備投資が可能なシステムであることが特徴です。

 一方、米国においては、近年、スマートグリッドと呼ばれる、送配電電力技術と情報通信技術を一体化して、再生可能エネルギー利用との調和を図ろうとする技術開発が急ピッチに進められています。
ECOネットのような自律分散型のシステムの上に如何にスマートグリッドのように情報技術を融合させ、再生可能エネルギーを爆発的に普及させる事の出来る電力アーキテクチャを構築できるかが、大きな課題となっているのです。

自律分散型直流スマートグリッド i-Rene

 本研究プロジェクトで開発を目指している「自律分散型直流スマートグリッド」は、自律分散型の電力アーキテクチャであるECOネットの発想に基づき、知的に地域で発電された電力を知的に融通し、地域で消費すための日本版スマートグリッド構想です。

 システムは、再生可能エネルギーを中心とする発電設備、直流電力を貯蔵または需給を安定させるための蓄電装置、電力融通を行う電力系統制御装置、ネットワーク内で使用されるパワーエレクトロニクス装置、安全保護装置と、これらを相互に接続する送配電網、各構成要素間の情報交換通信プロトコル、などから構成されます。デバイスとしての構成要素となる直流電力機器は、これまでの交流電気を主体とする電力市場では多く使用されていないことから、従来の電力グリッドとその系統連系に囚われない新しい直流電力インターフェースの開発や、電圧変換器や遮断器、低損失性と制御性、安全性を考慮した装置の新規開発などが必要となります。また、電力ルータ開発のためには、半導体スイッチング素子の高性能化、蓄電システムの小型化・高出力化と、自律分散と拡張性を備えた電力系統制御装置、とりわけこれに組み込まれる制御プログラムの開発が必要になってきます。

 直流による送電を行なう技術は、電力会社間の電力融通において一部実用化されているものの、小規模なシステムの開発は殆どありません。一方、鉄道においては、当初より直流システムで運用されているほか、最近では、通信会社のデータセンターなど、直流電力を大量に消費するシステムにおいて、400V前後の直流による電力供給が開始され始めて来ています。自律分散型の電力ネットワークと並び、直流化技術も並行して実現すべき課題なのです。

自立分散型直流スマートグリッド

人工知能による地域電力市場における適応的自動電力取引

 自律分散型直流スマートグリッド i-Rene構想の実現のためには、電力ルータや蓄電装置といったデバイス開発のみならず、より上位概念であるシステムとしての安定条件、設計法の構築が不可欠となります。

 家庭における電力需要は、季節変動が存在するものの、朝夕に高くなり、昼間や夜間に低くなるのが一般的である。一方、太陽光発電においては、その発電量は入射する太陽エネルギーに基本的に比例するため、快晴の日のように非常に多く発電する日と、梅雨時のように日射量が極端に少ない日が存在する。そのため、太陽光発電装置のみで一般家庭の電力を時間的な平準化なくして、すべて賄うのは不可能となります。

 そこで各発電消費拠点をネットワーク化し、一時的な余剰電力を、各拠点間で融通しあうことが、今回提案している自律分散型直流スマートグリッドの基本コンセプトとなっています。自律分散型直流スマートグリッドi-Rene構想では、系統への逆潮流は行わず、電力不足時のみ系統から電力を購入する。そのため、系統連携による電力系統の混乱を危惧することなく、太陽光の圧倒的普及を促進し、低炭素社会の実現に大きく貢献できるものと考えられます。

 電力融通方法としては、各発電・消費主体が自由に取引を行う事で、市場経済に基づいた電力売買を実現することを目指します。しかしながら、一般の家庭や事業所では、変動価格による電力取引をリアルタイムで行うことの出来る人員が居ることは想定出来ません。そこで自律分散型直流スマートグリッド i-Rene構想では、各電力ルータに人工知能を持たせ、それが所有者の利益を最大化するように、発電パターン、消費電力パターン、価格変動パターンなどに基づき取引条件を学習することで、効率的な融通を目指す、全く新しい知能情報技術に基づく電力システムの構築を目指しています。

 また、このようなシステムは経済システムとしての性質を検討することが重用であり、当プロジェクトでは経済学の分野の研究者との協働もはかりながら進めています。